分子科学研究所の概要 3
2-1 研究所の目的
分子科学研究所は,物質の基礎である分子の構造とその機能に関する実験的研究並びに理論的研究を行うとともに, 化学と物理学の境界から生命科学にまでまたがる分子科学の研究を推進するための中核として,広く研究者の共同利 用に供することを目的として設立された大学共同利用機関である。物質観・自然観の基礎を培う研究機関として,広 く物質科学の諸分野に共通の知識と方法論を提供することを意図している。
限られた資源のなかで,生産と消費の上に成り立つ物質文明が健全に保持されるためには,諸物質の機能を深く理 解し,その正しい利用をはかるのみでなく,さらに進んで物質循環の原理を取り入れなければならない。生体分子を も含む広範な分子の形成と変化に関する原理,分子と光の相互作用,分子を通じて行われるエネルギー変換の機構等 に関する研究は,いずれも物質循環の原理に立つ新しい科学・技術の開発に貢献するものである。
2-2 沿 革
1960 年頃から分子科学研究者の間に研究所設立の要望が高まり,社団法人日本化学会の化学研究将来計画委員会に おいてその検討が進められた。
1965. 12.13 日本学術会議は,「分子科学研究所」(仮称)の設置を内閣総理大臣あてに勧告した。
1973. 10.31 学術審議会は,「分子科学研究所」(仮称)を緊急に設立することが適当である旨,文部大臣に報告した。 1974. 4.11 文部大臣裁定により,東京大学物性研究所に分子科学研究所創設準備室(室長:井口洋夫前東京大学
物性研究所教授,定員3名)及び分子科学研究所創設準備会議(座長:山下次郎前東京大学物性研究所 長,学識経験者35人により構成)が設置された。
1974. 7. 6 分子科学研究所創設準備会議において,研究所の設置場所を岡崎市の現敷地と決定した。
1975. 4.22 国立学校設置法の一部を改正する法律(昭50年法律第27号)により「分子科学研究所」が創設され, 初代所長に赤松秀雄前横浜国立大学工学部長が任命された。 同時に,分子構造研究系(分子構造学第一 研究部門,同第二研究部門),電子構造研究系(基礎電子化学研究部門),分子集団研究系(物性化学研 究部門,分子集団研究部門),機器センター,装置開発室,管理部(庶務課,会計課,施設課,技術課) が設置された。
1975. 12.22 外国人評議員の設置が制度化された。
1976. 5.10 理論研究系(分子基礎理論第一研究部門,同第二研究部門),相関領域研究系(相関分子科学研究部 門),化学試料室が設置された。
1976. 11.30 実験棟第1期工事(5,115 m2)が竣工した。
1977. 4.18 相関領域研究系相関分子科学研究部門が廃止され,相関領域研究系(相関分子科学第一研究部門,同 第二研究部門),電子計算機センター,極低温センターが設置された。
1977. 4. 大学院特別研究学生の受入れが始まる。
1977. 5. 2 国立学校設置法の一部を改正する法律により生物科学総合研究機構(基礎生物学研究所,生理学研究 所)が設置されたことに伴い,管理部を改組して分子科学研究所管理局とし,生物科学総合研究機構の 事務を併せ処理することとなった。管理局に庶務課,人事課,主計課,経理課,建築課,設備課,技術 課が置かれた。
1978. 3. 7 分子科学研究所研究棟(2,752 m
2
)が竣工した。
1978. 3.11 装置開発棟(1,260 m2),機器センター棟(1,053 m2),化学試料棟(1,063 m2)が竣工した。
1978. 4. 1 電子構造研究系に電子状態動力学研究部門,電子構造研究部門が,分子集団研究系に基礎光化学研究 部門が設置された。
1979. 3. 1 電子計算機センター棟(1,429 m
2
)が竣工した。 1979. 3.24 実験棟第2期工事(3,742 m
2
),極低温センター棟(1,444 m
2
)が竣工した。
1979. 4. 1 分子構造研究系に分子動力学研究部門が設置され,管理局が総務部(庶務課,人事課,国際研究協力 課),経理部(主計課,経理課,建築課,設備課),技術課に改組された。
1979. 11. 8 分子科学研究所創設披露式が挙行された。